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平成16年財政再計算
財務省主計局給与共済課課長補佐 工藤哲史
少子高齢化の急速な進行のなかで社会経済と調和した持続可能な制度を構築し、国民の公的年金制度に対する信頼を確保するとともに、多様な生き方、働き方に対応した制度とするために、制度全般にわたりその根幹に関わる改革が必要であるとされている。
国家公務員共済組合制度については、財政制度等審議会国家公務員共済組合分科会(貝塚啓明会長)において、昨年二月から合計六回にわたり、厚生年金を中心とした年金制度改革の検討状況等を踏まえながら共済年金制度の課題についての議論を行い、去る二月十二日に意見が取りまとめられた。この分科会の意見を参考にしたうえで作成された「国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律案」は、二月二十日の閣議を経て、同日に国会提出された。
以下、改正案の主な内容を紹介したい。
今回の改革に際し、厚生年金にあっては、将来の保険料水準を十八・三〇%に固定した上で給付水準についてマクロ経済スライドの調整を行い、固定された保険料水準の下でも安定的な給付を継続していく仕組みの導入が提案されている。マクロ経済スライドは、社会保険料負担能力の伸び、公的年金被保険者数の減少率や平均余命の動向といったマクロ経済の変化を厚生年金の給付水準に反映させていこうとするものである。
共済年金において、厚生年金と同じように保険料水準を固定し、共済内部における組合員数等の変化率で独自に給付を調整することとした場合には、社会全体の動向とは異なる変化が共済内部に生じれば、給付水準の調整幅が厚生年金と共済年金とで乖離していくこととなる。また、保険料率を固定した上で共済年金の給付水準も厚生年金の調整率と同率で調整していくこととした場合に、仮に組合員数が大幅に減少することとなれば、共済年金ではより少ない現役組合員で給付を賄わなければならなくなり、それは財政悪化に直結することになる。このようなことを勘案すれば、共済年金に保険料水準を固定する仕組みを導入することは適当でないと考えられる。
したがって、これまでと同様、給付水準を厚生年金に準拠して定める方式を維持し、給付水準の調整は、厚生年金と同一の比率で行うこととし、その結果、これを賄うために必要な保険料率を決定していくこととしている。
共済年金の具体的な保険料率は、これまでと同様に五年ごとの財政再計算を行って国家公務員共済組合連合会の定款で定めることとなるが、当面、今後の組合員数の動向について複数の前提を置いた試算を行っていきたいと考えている。
また、給付と負担の均衡を図るべき期間を既に生まれている世代が概ね年金受給を終えるまでの期間として、おおむね百年程度の期間について給付と負担の均衡を図る方式(有限均衡方式)を採用し、積立金を活用することとしている。
基礎年金拠出金の国庫負担割合(三分の一)を平成二十一年度までに二分の一に引き上げる(所要の安定財源を確保する税制の抜本的改革を行った上で施行する。)ほか、厚生年金保険制度の改正案の内容を踏まえて、以下のような見直しを行うこととする。
平成十三年三月の閣議決定「公的年金制度の一元化の推進について」において、国家公務員共済年金と地方公務員共済年金の両制度間で財政単位の一元化を図ることとされている。このため、その具体的方策として、両制度の異なる保険料率を一本化する(平成十六年から段階的に一本化を実施することとし、平成二十一年に同一の保険料率とする)とともに、両制度間において費用負担の平準化のための財政調整を行うこととし、また、将来において年金給付に支障を来すような事態が生じた場合に赤字を補てんする財政調整の仕組みも設けることとしている。(平成十六年十月実施)